林鵞峰『改元物語』について

江戸時代初期の改元事情について記した『改元物語(改元格)』という記録があります。
林鵞峰が記したものです。林鵞峰は、林羅山の息子で『本朝通鑑』などの歴史書の編纂を父とともに行いました。
『改元物語(改元格)』には元和から延宝までの改元について記されています。
幕府側から見た改元事情がわかります。

たとえば、正保改元について、改元物語に以下のような記述があります。

寛永二十年ノ冬、後光明天皇即位アリ、一年號三帝ニ渉ル例ナシトテ、明年十二月改元アリテ正保ト號ス、此時諸家ノ勘進スル所數多アリトイヘドモ、大猷公御前ニテ御裁斷アツテ、
仰ニ曰、年號ハ天下共ニ用フルコトナレバ、武家ヨリ定ムベキコト勿論也、公家武家ノ政ハ正シキニ若ハナシ、正シクシテ保タバ大吉也ト議定シタマフ…

改元物語より

一年号三帝にわたる例がないとして、正保への改元が行われました。
徳川家光が「年号は天下で用いるものだから武家が定めるのは当然である。公家・武家の政治は正しいことにまさるものはない。正しくて保てば大吉である」と述べています。
このように、江戸時代初期の改元についての事情が記されています。

『改元物語(改元格)』は、所功 著『年号の歴史』で翻刻されており、読むことができます。
ネット上にないのか調べたところ、国文学研究資料館の電子資料館にある古事類苑の歳時部に引用されていました。

古事類苑データベース

本文1,000巻、洋装本で51冊(60冊版もあり)、和装本で350冊にのぼる『古事類苑』は、その完成から約1世紀が経とうとしている今なお、日本最大規模の地位を保ち続けている百科事典です。

国文学研究資料館 古事類苑データベースより

歳時部 > 年號 > 年號通載
に大化から始まる各年号が表示され、元和から延宝にかけて関係する史料として『改元物語』が引用されています。
他の史料として『續史愚抄』『元秘別録』などがひかれています。

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